マレット指の事例

マレット指、マレット変形(槌指)は重度の突き指で、指の第一関節を曲げることは出来ても伸ばすことが出来ない症状です。
やってしまいました。

手袋をして作業している時に荷物に引っ掛けて左手薬指を突き指してしまい、結構ひどい突き指したな、と思いつつもさほど痛くなかったのでそのまま作業を続けていました。
ひとしきり作業をした後、違和感が続いていたので手袋を外してみると・・・。
「あれ?曲がってるな。・・・伸びないな。・・・あれ?」
指先が曲がったままなので驚いて、すぐ病院に行きました。

マレット変形について調べて見ると骨折を伴うものと腱が切れるものとで2種類あり、腱性の場合は痛みは少なく、骨性は骨が折れているので痛みや腫れが見られるとのことでした。
骨折の有無を調べるためにレントゲン撮影がありましたが、受傷直後を除き痛みはほぼなく、診断も腱性マレット変形でした。

医師の説明では腱の破断を伴わない骨性の方が治りがやすく、腱性の場合は完治するのは6~7割くらいとのことで、2~3割は治らない(=指が伸ばせなくなる)と知ってかなり怖くなりました。

マレット変形装具

腱性マレット指の治療方法は装具固定の保存療法です。
画像のような装具を付けて第一関節が曲がらないように固定します。
期間は概ね6~8週間。
これで治らなくてどうしても動かしたい場合は専門医に相談することになります。

装具の困り事について

この画像と同じタイプの装具を付ける方は急性期を過ぎると、ずれたり、外れたり、水仕事をしたくとも装具ごと収まる手袋が見当たらない、十分な手洗いができないので不衛生さが気になる、などの困り事を抱えると思います。
私も同じです。

装具のズレ・外れ防止

状況に応じて方法1~4で装具を固定しています。
普段は1か4、作業が必要な時は1~3。就寝時に外れるようなら1、または1と2を併用です。

  • 方法1
    フェルトや固定ベルトの部分を避けて金具面が広く露出している2か所にサージカルテープを直接巻き付けると、皮膚や爪と固定されるのでずれたり外れたりしにくく、最小限の大きさになりますので日常生活でも邪魔になりにくいです。
    この方法が一番安定していて良いのですが、サージカルテープの接着剤が装具や指に残ることと、貼り替えが頻繁になると肌が荒れやすいこと、装具の金具やマジックテープがあちこちに引っ掛かって邪魔になるのが難点です。
    ずれたらサージカルテープを外して装具の位置を直し、テープを貼りなおします。
    汚れが気になる場合は更に包帯などで保護します。
  • 方法2
    方法1のような固定はせず、装具の上から軽く包帯を巻いてサージカルテープで包帯を留めます。
    包帯が装具の汚れをある程度防いでくれる点は良いです。
    最初に装具を病院で取り付けて頂いた時にもこの方法で、方法4の装具のみの状態よりはましですが装具と指との固定が装具のベルトだけなのでずれやすく、夜寝ていると装具ごと外れることが多いです。
    防ぐ場合は、包帯から手のひらや甲に向けてテープを貼るか、方法1で固定した上で包帯を巻くしかありません。
    病院では幾重にも巻かれましたが包帯を巻きすぎると邪魔になりますので、2~3周程度がちょうど良いです。
    切るのは手間ですが4cm幅位の包帯を半分に裁断して巻き付けると固定が楽でした。
    また、片手で巻くのでくっつく包帯が便利です。
    装具と皮膚は固定されていませんので、ずれたら包帯ごと装具を動かします。
    大きくずれた場合は包帯を外して装具を付け直します。
    方法1で装具自体を固定しない限り、ずれたり外れたりする頻度は高いです。
  • 方法3
    第二関節の動きが大幅に抑制されますが、方法1と方法2を併用し、更に上からテーピングテープで保護すると固定力が増してある程度の重作業が可能になります。
    テーピングは伸縮性が無く接着力も強いため、一番大きなLサイズの使い捨てポリエチレン手袋などの親指部分をカットして被せた上でテーピングすると、ハサミ等を入れる隙間が作れて外しやすくなる上に軽い水濡れも防げます。
    軍手などの手袋をしたい場合は、装具を付けた指が入る部分の手袋の指を切れば良いです。
    この場合も装具はある程度動かせますので、軽微なずれの場合はテーピングの上から装具を動かして位置を直します。
    装具の意味をなさないほどずれた場合は全部外して付け直すしかありませんが、時間を要するので作業は確実に中断します。
  • 方法4
    受傷から1週間ほど経過すると装具が外れてもすぐには第一関節が曲がらなくなりました。
    装具慣れしたこともあり、外れたりずれたりしても嵌めなおせば済む、と考え、この頃から装具のみで過ごすことも増えました。
    ずれたり外れたりした時はその都度装着しなおします。
    包帯もテープも要らないし、ずれたり外れたりした際はすぐに分かりますし直せますので、指をあまり動かさない状況の時は良いです。

水仕事

装具を付けた指はゴム手袋に入らないので、汎用品での対処は正直お手上げです。
ビニール袋を2~3重にして水濡れ覚悟でやるしかありません。
が、調べてみると、指先にゆとりのあるミトンタイプのゴム手袋があるようです。
ダンロップホームプロダクツの「包帯したまま使える手袋」、まだ試していないですがこれは良さそうです。

衛生対策

医師の指示は「装具は絶対に外さないように」ということなので本当はダメなのでしょうが、やはり装具が濡れたり手が汚れたりすることは日常的に発生しますので、受傷から1週間を経過して装着に慣れた頃から自己判断でお手入れしています。

  • 手洗い
    普段は装具や包帯が水濡れしない程度に軽く済ませ、またそれで済む程度に出来るだけ手を汚さないよう気を付けています。
    アルコールやエタノールの消毒液は気化しやすいので装具への湿潤を気にせず、手荒れしない程度に使っています。
    装着部位周辺のちゃんとした手洗いは入浴後に装具を外して指を曲げないよう注意しながら行っています。
    入浴中は装具を付けて、袋を被せて防水しています。
    防水が上手くできても水滴などでだいたい濡れます。
    手もふやけていますので、手をしっかり洗うのは入浴後のこのタイミングだと思います。
    このタイミング以外でどうしても汚れが気になる場合は、装具の着脱などで時間がかかるのを覚悟した上で洗います。
  • 装具の着脱
    細心の注意を払って絶対に第一関節を曲げないよう気を付けて、外した後は洗面台やテーブルなどの水平な場所に指を置くなどして装具代わりにします。
    装具は日常的にずれたり外れたりしますので、装具装着から数日経過すると外すこと自体にあまり抵抗はなくなります。
    そもそも、絶対に外れてはならないのなら骨折治療と同じようにギプス固定するはずなので、曲げないように注意すれば大丈夫だろうと勝手に思っています。
  • 装具のお手入れ
    装具も洗いたいところですが、画像のタイプはフェルトが縮んだり外れたりしてしまいそうなのでキッチンペーパーなどで汚れとともに水分を取り除いた後、ドライヤーで乾かして再装着しています。
    あまりにも不衛生さが気になったら水洗いとエタノール消毒くらいはしてみようと思いますが、切り傷などがある訳でもありませんのでこれで十分です。

回復状況 受傷から1週間後

受傷当日に装具を装着してから約1週間ほどで、装具装着状態のままで僅かに指が伸ばせる感覚がありました。
指の動きは気のせいかと思えるほどほんの少しだけしか動いていないですが、健常な指で第一関節のみを伸ばそうとしても僅かしか動かないので十分な成果です。
治る期待が持てました。

2~3週間経過後

状態は1週間経過後とあまり変わりませんが、傷を労わる感覚ではなく物を持つ時に自然と屈伸する感覚が出始めました。
マレット変形以外の突き指のダメージも回復してきているせいだと思います。
装具があるおかげで第一関節の屈伸はできませんので、無理をしないで済んでいます。
実際に治るかどうか判明するのはまだ数週間先なので装具とは暫く付き合うことになります。
第二関節の動きの制約は少ないですがやはり不便を感じています。
ですが、今後一生指が伸ばせなくなってしまう恐怖に比べれば些細なことです。

4~5週間経過後

約1か月が経過すると、装具を付けたままの状態で指先を伸ばした時の動きが明らかに大きくなってきました。
腱が繋がりつつある気がします。
しっかり指を握りしめたい、という欲求が強くなっていますので回復は順調のようです。
十分回復していないのは明らかなので。まだ装具を外して生活する気にはとてもなれません。
日常生活では親指、人差し指、中指の3本で物を持ったり掴んだりしていますが、握りたいという欲求からか、つい薬指にも力を入れてしまうことが多くなりましたので意識して気を付けています。
装具を真面目に付けていると指輪の跡のように圧迫跡が出ますので、装具のお手入れをする際に外す時間を長くとり、圧迫から解放する時間を設けるようにしています。

病院の診察は初診以降、1~2週間に1度です。
初診でレントゲン撮影をして以降、異常を感じるかどうかの問診だけで触診などはありません。
治療好きには少し物足りないかもしれませんが、触診や指の外観で腱の回復具合が分かる訳でもなさそうですし、時間を要する保存療法ですので問題ないと思います。
ただ、受傷から4週間目に金属製装具を装着したままで受けた経過観察のレントゲン撮影は、患部が装具に隠れて十分映っていなかったので訝しく感じました。
ともあれ、受傷部位に違和感なども無く回復している感覚がありますのでそのまま同じ病院に通っています。
スポーツ外傷や手の外傷などを専門にしている医師でもない限りマレット変形の症例に遭遇する機会は少ないでしょうから、どこの病院に行ってもだいたい同じだと思います。
受診した病院がマレット変形の装具を常備されていて、受診当日にすぐ装着して頂けたのは良かったです。

装具代替品

あと数週間で治療期間が終わる時期になって装具を落として無くしてしまいました。
とにかく曲がらないようにしなければなりませんので、装具再装着までの繋ぎとして添え木で固定しました。
添え木には手元にあった工作用のアイスクリーム棒を使いましたが、割りばしでも長さ調整がしやすくて使えそうです。

添え木

病院で提供される装具は社会保険適用なしの価格で8000円前後です。
装具の保険適用には療養費の請求として自己申請(保険者への書類提出)が必要で、診察当日は保険適用のない額を支払います。
無事保険が適用された場合の還付は数か月後です。
治療のタイミングや装具の費用などを考え、市販の装具が無いか調べたところ良さそうな装具が見つかりましたので、病院の装具を再度購入するのではなく安価な市販の装具で過ごすことにしました。

市販装具

画像の装具は1000円内外でAmazonで売っていました。
装着具合は概ね良好です。
単品でも売っていましたが、大きさの異なる3種類が入ったセットで配達時期が比較的早いものがありましたのでそのセットにしました。
指の大きさがよく分からない場合はもう少し種類の多いセットを選ぶと良いです。
市販装具が指の大きさにマッチしない時はフェルトやガーゼなどで調整するつもりでしたが、概ね合っていましたので不要でした。
病院支給の装具と比較して違いを感じた点は次の通りです。

指を適切な位置で固定する能力は医師や装具士によってフィッテイングされる病院装具の方が優れています(ずれたり外れたりしなければ)。
ずれ易さは凹凸が少ない市販装具の方がずれにくいです。
水濡れには市販品の方が強いです。(※)
装着時に邪魔にならないのは凹凸が少ない市販品です。
お手入れが楽なのはベルト以外プラスチック製の市販品です。
通気性が良いのは指との接面がフェルト製の病院装具で、市販品は指を覆うので蒸れやすいです。
価格は市販品の方が圧倒的に安く、1個あたりでは病院装具の約1/25です。
※市販品付属のベルトは水濡れに弱いので、水濡れする時はサージカルテープに変えます。

市販装具の価格や装具の費用を療養費として申請するには医師の意見書などが必要なことを考えると、自己判断で購入した市販装具の保険適用を考える必要はないでしょう。

早期治療が最優先

指が曲がったまま自分の意思で伸びなくなるとか、怖すぎです。
受傷直後はかなりインパクトがありましたので大抵の人はすぐに病院に直行すると思います。
怖くなかった人も、痛みが無い人も、時間がない人も、とにかく速やかな受診と治療開始が大切です。

装具をして腱の断裂面を密着させるのは切り傷の手当で傷口が開かないように縫合したりするのと同じです。
切り傷や擦り傷などの傷口は1~2日ほどもあれば塞がり始めますので、時間が経つと断裂面自体がその部分で完結して回復し始めてしまい腱の接合が期待できなくなる、そう考えてみると、回復率が6~7割というのも納得です。
回復自体は100%の確率で誰にでも起こります。
ただ、傷口が塞がる回復期間に腱の断裂面が何らかの理由で接合可能域に密着できていなかったりすると腱が癒合しないので、それが3~4割ほどあるということだと思います。

6週目以降(2024/05/02)

病院に通わなくなったのは受傷から約2か月経過し医師から装具を常時外していて良い、と言われてからです。
しかし、この時期はまだ常時装具を外したままの状態にするとまだ十分な伸展が得られませんでした。
その対処を医師に聞くと、「回復が期待できるのは概ね受傷後半年程度以内なので、伸展が十分でない間は半年程度装具を装着して回復を目指してみましょう。ただし元通りになるかどうかは回復次第なのでやってみないと分からないです。必要であれば診察はしますが、どうしますか?」
あまり細かな指示をしないタイプの医師でしたし、治療内容も特に変わらないので「大丈夫です。気になるようでしたらまた来ます。」と答えて行かなくなりました。

伸展が十分でなく、屈伸時に違和感を感じる間(受傷から約5か月位)は就寝時や平静時などに装具を装着してサポートしていました。
起床時に装具を外して一日過ごしていると、昼過ぎから夕方にかけて伸展時に少し屈曲していることに気づくことが多かったので、概ね半日ごとに付けたり外したりしていました。
4か月を過ぎた辺りでようやく一日中装具を外していても曲がらなくなりましたが、違和感はありましたので屈曲が気になった時は装着していました。

気になる間は装具装着

固定期間(治療期間)は6~8週間と言われていましたが、実は腱が癒合してある程度動くようになってからも非常に大事な時期なので、この期間は腱が繋がるまでの期間を示しているだけです。
6~8週間を過ぎた時期は単に腱が繋がっただけの状態ですので、伸展した状態が全然定着していないのでまだ治っていないです。
腱が繋がる=完治、という認識は誤りです。

伸展した状態を腱に再記憶させるために、腱が繋がった後も数か月は固定する必要があります。
常時固定してしまうと動かなくなりますので、期待する伸展状態(受傷前の指の伸展)ができていないと感じた時は面倒がらずに装具を装着して、腱に伸展時の状態を定着させることを意識すると良いです。
入浴時などに痛みが生じない範囲で深く屈伸させて可動域を確保することもしていました。

これらを実践した結果、7か月が経過した現在、若干違和感はあるものの受傷前の8~9割程度の動きになっています。
まだ重い物を持ったりする際は多少庇ってしまいますが、ほぼ元通りに治癒したと言っていいかと思います。
装具は付けなくなりました。